運動はがん治療の有害な影響を打ち消す
英語オリジナル版はこちらBritish Journal of Sports Medicine誌オンライン版で発表された、既存の統合データ解析の包括的レビューによる最新研究では、運動が心臓や神経の損傷、ブレインフォグなどのがん治療の有害な影響に対抗できることを示唆している。
運動はまた、心理的ウェルビーイングや全般的なQOLも高めると考えられ、がんの治療プロトコルにルーチンとして組み込む重要性が増していると研究者らは述べる。
いくつかの利用可能な研究の統合データ解析により、がん患者の健康転帰に対する運動の影響が評価されているが、われわれの理解には大きなギャップが残っていると研究者らは説明する。
また、現在までのところ、さまざまながん患者における運動と健康転帰に関する既存の統合データ解析結果の包括的評価は発表されていないと研究者らは付け加えている。
このギャップを埋めるため、研究者らは、根拠を強化し、臨床ケアのための情報提供を目的として、2012年~2024年7月までに発表された無作為化比較試験結果の既存の統合データ解析の包括的レビューを行った。
本レビューには、80の論文から抽出した485の関連が含まれ、そのすべてが中等度から高度なクオリティであると評価された。
これらの関連のうち、長さ、強度、継続時間の異なる運動の種類には、気功、太極拳、ヨガなどの心身運動(138、28.5%)、有酸素運動および抵抗運動(48、10%)、高負荷のインターバルトレーニング(HIIT)(18、4%)、およびその他(281、59%)が含まれた。
これらの関連は、乳がん(244例、50%)、消化器がん(20例、4%)、血液がん(13例、3%)、肺がん(47例、10%)、前立腺がん(12例、2.5%)、その他(149例、31%)のがん患者で調査された。
全体で260件(54%)の関連が統計学的に有意であり、医療における科学的根拠の確実性と推奨の強さを評価するために使用されるGRADE criteriaによれば、それぞれ81件(17%)と152件(31%)が高度および中等度の確実性の根拠によって裏づけられた。
運動をすると、通常のケアや運動をしない場合に比べて、がんやその治療に伴うさまざまな副作用が大幅に軽減された。
例えば、化学療法に伴う心臓や末梢神経の損傷、ブレインフォグ(認知機能障害)、息切れ(呼吸困難)などが軽減された。
また、がん患者の体組成や、インスリン、インスリン様成長因子、C反応性タンパクなど、健康の主要な生理学的指標も変化した。
そして、睡眠の質、精神的充足、身体の正常な働き、社会的交流が改善され、全般的なQOLが向上した。
また、術前の運動が、術後の合併症、疼痛、入院期間、死亡リスクを減少させるという、高度から中等度の確実性のエビデンスがあった。
研究者らは、自分たちの研究結果にはさまざまな限界があることを認めている。
レビューに含まれる統合データ解析は、その根拠となる研究数を含め、かなり異なっていた。
研究者らは、運動可能ながん患者は、より健康であった可能性があることを示唆している。
また、治療による副作用は、がんの種類や病気の進行度によって異なると指摘している。
しかし、彼らは次のように結論づけている。「がん患者の運動指針に心身の運動を取り入れることは、価値ある検討事項の可能性がある。多様ながん患者集団に対してより正確で臨床的に適切な介入を確実にするために、さらなる成果を探求し、根本的なメカニズムを明らかにし、がんの種類、治療のタイミング、運動方法、個人の特性に合わせた運動処方を改良する質の高い研究が今後も必要である。」