大腸がんは心血管疾患による死亡リスク増加と関連する
英語オリジナル版はこちらAmerican College of Cardiologyの年次学術集会(ACC 2025)で発表された研究によると、大腸がんと診断された人は、一般集団に比べて心血管疾患が原因で死亡する割合が有意に高く、特にがんと診断されてから最初の2年間と50歳未満で死亡する割合が高い。
米国では大腸がんが増加しており、本研究は心血管疾患による死亡割合を追跡し、リスクが経時的にどのように変化するかを評価した初めての研究である。
この関連性の原因はまだ不明であるが、本知見は大腸がん診断時に、特に黒人、男性、50歳未満の人々では、がん治療中に心臓の健康にさらなる注意を払う必要性を示唆していると、研究者らは述べている。
「今回の結果から、大腸がん診断後の2年間は、患者が心血管転帰を改善するために積極的な治療を必要とする重要な期間であることがわかった」と、ニューヨーク州NewburghにあるMontefiore St. Luke's Cornwall Hospitalの内科研修医で、研究チームの一員であるAhsan Ayaz氏(MD)は述べた。
「例えば、心血管系の危険因子、糖尿病、高血圧などの併存疾患をコントロールするための積極的なアプローチが必要である。また、これらの危険因子のほとんどはプライマリ・ケア提供者によって管理されているため、腫瘍科チームとプライマリ・ケアチームとの連携も必要である。」
心臓病は世界的な死因の第一位であり、多くの研究で、がん患者は心血管系の問題のリスク増加が示唆されている。
2022年にJACCに掲載された試験では、がんサバイバーは心血管疾患のリスクが37%増加することがわかった。
しかし、特に心血管疾患による死亡割合と大腸がんの関係はあまり研究されていない。
研究者らは、National Cancer InstituteのSurveillance, Epidemiology and End Results(SEER)データベースのデータを使用し、2000~2021年の間に大腸がんと診断された63万例以上の米国成人の結果を分析した。
本研究では、心血管疾患による死亡を、心臓病、高血圧、脳卒中、その他の脳血管疾患、動脈のプラーク蓄積(アテローム性動脈硬化)、大動脈破裂や動脈瘤に起因する死亡と定義した。
その結果、大腸がん患者は、大腸がんでない人に比べて、心血管疾患が原因で死亡する割合が16%高いことが示された。
このリスクは、大腸がんと診断されてから最初の2年間が最も高く、この期間中に患者のリスクは45%増加した。
このリスクの上昇は、特に50歳未満で顕著であり、大腸がんでない同年齢層の人々より、心血管疾患が原因で死亡する確率が2.4倍高かった。
黒人の大腸がん患者は、一般人口と比較して74%リスクが増加し、男性は55%リスクが増加した。
Ayaz氏は、本研究で観察された格差は、社会経済的地位、地理的位置、そしてケアへのアクセスの違いなど、複数の要因から生じている可能性があり、さらなる研究と注意を払う必要があると述べた。
心血管疾患による死亡リスクの上昇は、がん治療の副作用、がんそのもの、および、がんが引き起こす炎症過程、あるいはその他の原因や複数の原因の組み合わせから生じている可能性があると、研究者らは述べた。
「新しい治療法については、副作用や毒性に関するデータは多くないが、心血管毒性を引き起こすというエビデンスは明らかになってきている」と、Ayaz氏は述べた。
「このような問題を速やかに発見し、軽減するための措置を講じることが重要である。」
研究者らは次に、異なるがん治療を受けている患者における心血管疾患による死亡割合の傾向を評価するため、系統的レビューとメタ解析を実施する予定である。
本研究で指摘された格差に基づき、大腸がんの臨床試験において、社会経済的地位、保険加入状況、医療へのアクセスなどの因子が果たす潜在的役割についてさらに研究する必要があると、Ayaz氏は述べた。