胃がん手術により心臓病リスクが低下する可能性がある
英語オリジナル版はこちら胃がんは、心血管疾患のリスクを高める、非常に有病率の高い、治療が困難で進行の速い疾患である。がんの病期にもよるが、治療にはがんに侵された組織の外科的切除が一般的である。
外科手術には、胃切除術(胃の一部または全体を切除する手術)、内視鏡的切除術(内視鏡を使って腫瘍を正確に切除する非侵襲的な方法)などがある。
胃がん治療における両手術は心血管リスク因子を変化させるが、その変化の仕方は異なる。しかし、胃がん手術が心血管イベントの発生に与える影響は不明瞭である。
このギャップを埋めるため、Korea University College of MedicineのDivision of Foregut Surgeryに所属するYeongkeun Kwon助教授率いる研究チームは、外科治療を受けた胃がん患者の心血管疾患の長期的リスクを調査するため、全国規模のコホート研究を実施した。
本研究結果は、International Journal of Surgery誌に掲載された。
研究者らは、2004~2013年にかけて、胃がんの外科治療を受けた患者と一般集団との間で、心臓発作や脳卒中などの主要心血管有害事象(MACE)の発生を分析した。
その結果、7年間の追跡期間中に胃切除術を受けた患者の2.9%のみがMACEを発症した。
一方、内視鏡的切除を受けた患者の5.4%が同期間内にMACEを発症した。
本研究結果の臨床的重要性について、Yeongkeun Kwon助教授は次のように説明している。「胃がん治療に用いられる外科的手法は、胃の一部または臓器全体を切除するものであるため、他の健康被害が生じることが懸念される。われわれの研究は、胃がん手術が心血管リスクの低減という点で健康に有益であることを示している。」
さらに、統計解析の結果、胃切除術を受けた患者のMACEリスクは一般集団と比較して有意に低かった。しかし、内視鏡的切除群のMACEリスクは一般集団と有意差はなかった。
心血管疾患の発生に影響を及ぼす特定の危険因子に関するさらなる研究が必要である。
本研究の長期的影響について、Yeongkeun Kwon助教授は次のように結んでいる。「韓国は胃がんの長期生存率が世界で最も高い。したがって胃がんの長期サバイバーに関するデータも最も多い。われわれの研究のように、長期胃がんサバイバーの健康状態に関する情報が蓄積されれば、医療従事者や胃がん患者は、治療成績を大幅に改善できる情報に基づく意思決定を行うことができるようになるであろう。」