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Children’s Oncology Groupが小児がんサバイバーの心不全予防を目指す最大規模の臨床試験実施

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米国最大級のがん研究・治療機関であるCity of Hopeの医師らが、Children’s Oncology Group(COG)と協力して、小児がんサバイバーの心不全発症リスク低減を目指す、これまでで最大規模の臨床試験を実施した。

The Lancet Oncology誌に掲載された研究結果は、小児がんサバイバーが血管拡張薬カルベジロールを安全に服用でき、化学療法による心臓障害の重要なマーカーを改善する可能性があることを示している。

アントラサイクリンと呼ばれる化学療法の一種による長期にわたる壊滅的な副作用の 一つは、心臓が身体の必要量を満たすのに十分な血液を送り出せなくなる心不全のリスクの増加である。

これは、心筋の菲薄化と心室の拡大を特徴とする、心臓が時間をかけて徐々に変化していく遅発性のプロセスである。

残念なことに、心機能低下は発症後、不可逆的に進行するため、早期の予防戦略が急務となっている。

「小児がんサバイバー数の増加により、早期介入の開発が不可欠となっている。子どもたちのがんからの生還を支援するだけでは十分ではない。また、がんがなくなってから数十年後に、生命を脅かす副作用に直面することがないように、患者の健康を最適化する必要がある」と、City of Hope Children’s Cancer CenterのBarron Hilton Chair in Pediatricsであり、The Lancet Oncology誌掲載論文の筆頭著者であるSaro H. Armenian氏(DO, MPH)は述べた。

City of Hopeの医師らが主導した無作為化二重盲検第2B相臨床試験は、米国とカナダのCOG加盟30病院で実施された(COG Study ID: ALTE1621)。

登録された182例の参加者は、比較的低用量のカルベジロールまたは同等のプラセボを2年間服用した。

2つの試験群間で副作用に有意差はなく、カルベジロールの忍容性は良好であった。

本臨床試験では、心筋の菲薄化と心室の拡大を抑えるという目標は達成されなかったが、心臓の健康悪化の早期バイオマーカーである左心室収縮末期壁応力に有意な改善がみられた。

「最も効果があったのは、試験薬へのアドヒアランスの高い参加者と同様に、非常に長期のサバイバーであった。さらに、研究中に臨床的に重大な心機能低下を発症した患者8例のうち、6例は無作為にプラセボに割り付けられており、2例がカルベジロール投与群であった。」

「われわれの研究は、がん治療終了後に不可逆的な心機能低下リスクが特に高い特定の患者に対して、有意な有益性を示す可能性のある第3相臨床試験の舞台のお膳立てをする」と、Armenian氏は述べた。

Seattle Children’s Hospitalの血液腫瘍学教授でCOGグループ・チェアのDouglas S. Hawkins氏(MD)は、以下のように付け加えた。「30施設にまたがり、小児がんの長期サバイバーを対象に本研究を実施したことは、COGネットワークの強みを示した。

この規模の介入研究はCOG以外では不可能であろう。今後の研究では、カルベジロール介入の最適な時期、期間、集団に焦点を当てる必要があるだろう。」

本研究は、最初のがんの診断から数十年生存すると予想されるサバイバーの長期的な満足できる生活と健康の最適化を目指す将来的な研究開発のための重要な第一歩である。

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