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症状のない小児がんサバイバーにおける心臓リスクを予測する2つの一般的なバイオマーカー

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St. Jude lifetime cohort study(St. Jude LIFE)のデータから、ハイリスクで症状のない小児がんサバイバーが5年以内に心筋症を発症することを、日常的な臨床評価よりも、心機能と心臓障害の2つの一般的なバイオマーカーで予測できることが明らかになった。

これら2つのバイオマーカーを用いたスクリーニングによる早期発見が、さらなる心臓障害を予防・防止するための早期治療につながる可能性がある。

本研究結果は、本日、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された。

心筋症は多くの場合、発症時には無症状であるため、日常的な臨床評価では“わからない”。

St. Jude Children’s Research Hospitalの研究者らは、2つの一般的なバイオマーカー、global longitudinal strain(GLS)とN-terminal-pro-B-type natriuretic peptide(NT-proBNP)により、心機能が正常にみえるにもかかわらず、心筋機能が低下するリスクが高いサバイバーを特定できる可能性があることを発見した。

「これは、より早い段階での介入が有益と想定される小児がんサバイバーを同定する、より高感度な方法の可能性がある」と、筆頭・責任著者であるSt. Jude Department of OncologyのMatthew Ehrhardt氏(MD, MS)は述べた。

「GLSとNT-proBNPに異常のある患者において、このような比較的短期間で心機能が低下するリスクの大きさにはやや驚いた。これは、早期かつ効果的な介入の必要性を示唆しており、長期にわたる心不全への進行を防ぐことが期待される。」

研究の結果、ドキソルビシンなどの強力なアントラサイクリン系化学療法薬治療を受けた患者において、症状のない心臓障害の予測が増えることが示された。

本研究では、これらのバイオマーカーが放射線照射のみを受けた患者の予測モデルは改善しないことが判明した。

この知見は、医師が検査をアントラサイクリン曝露サバイバーのみに限定し、有用性を最大化しながら時間とリソースを節約するのに役立つ可能性がある。

「これは、最もリスクの高い患者にはより多くの検査を行う一方で、その恩恵を受けることのない患者には不必要な検査を行わないことを意味する」と、Ehrhardt氏は言う。

目にみえない心臓の問題を示す2つの兆候

症状のない心筋症のサバイバーを助ける鍵は、機能不全を早期に発見することである。

心機能は通常、心臓の一部から送り出される血液量をみる心エコー図を用いて評価される。

その容積を示す最も一般的な指標が左室駆出率である。

小児がんサバイバーの多くは、駆出率が正常のようにみえるが、後に心筋症を発症する。

研究結果により、駆出率が正常なサバイバーにおいても、GLSとNT-proBNPの異常が心筋症リスクの予測能力を向上させることが示された。

「ベースライン時に駆出率が正常で、両バイオマーカーの範囲が異常であったサバイバーは、その後5年間に駆出率が悪化するリスクが4倍高かった」と、Ehrhardt氏は述べた。

GLSは心エコー図から得られる心機能の追加の指標である。

GLSは、従来報告されている駆出率よりも心筋障害の検出感度が高い。

GLSは、駆出率や特定の時間に送り出される血液量といった、より基本的な測定ではなく、心筋線維の収縮能力をソフトウェアで数学的に推定したものである。

駆出率を測定するために心エコー図を実施する施設は、理論的には日常的にGLSの測定が可能である。

NT-proBNPは血清バイオマーカーで、心臓が傷ついたり酷使されたりすると血液中に大量に放出される化学物質である。成人の心臓病患者では、潜在的な心臓障害を同定するために頻繁に使用され、そのため広く利用されているが、小児腫瘍学への応用は比較的新しい。

より早期に心臓を予測し、保護するための実践的な対策

「本調査結果の有望な点の一つは、これら2つの対策がいずれもすぐに利用可能であり、したがって、より即座にケアに影響を与える可能性があるということである。

ほとんどの心臓専門医はすでにGLSを使っているし、NT-proBNPは以前からあった」と、Ehrhardt氏は述べた。

これら2つの一般的で利用可能な対策の併用により、心筋症リスクの高いサバイバーを早期に発見でき、早期治療介入につながる可能性がある。

早期発見は、他の病気をもつ成人の心臓障害を防ぐのに役立つが、小児がんサバイバーにも同様のベネフィットとなる可能性がある。

「本研究の興味深い点は、『あなたは心機能に異常をきたす危険がありますが、今日のところはすべて順調のようです。2~5年後に再評価しましょう』と伝える集団を特定するのに役立つ可能性があることだ」と、Ehrhardt氏は述べた。

「バイオマーカーに異常がある人は、特に高リスクグループであり、より綿密な追跡調査や、リスク低減のためのより積極的な介入が有益であると考えられる。この知見は、新規のスクリーニングと早期介入戦略を評価する今後の研究のためのものであり、最終的にサバイバーの心臓の健康と生活を改善することを期待している。」

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