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がん治療と心臓細胞保護のために使用される幹細胞

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化学療法はがん患者の主な治療法の一つである。化学療法薬は体内のがん細胞を破壊するが、この薬はがん細胞を選択的に標的とせず、程度の差はあれ健康な細胞にも毒性を示す可能性があるため、患者はしばしば副作用に直面する。一例はドキソルビシンと呼ばれる化学療法薬で、乳がんや特定の種類の血液がんの患者に高い頻度で投与される。

しかし、高用量ドキソルビシン治療を受けている患者の最大3分の1が心臓障害を経験し、長期的には心不全に至る可能性がある。がん細胞と同様に、ドキソルビシンは正常な心臓細胞に侵入し、細胞のDNAに損傷を与え、最終的に細胞死を引き起こす可能性がある。がん細胞に対するドキソルビシンの特異性を高めるために、米国Cedars-Sinai Medical Centerの研究者Arun Sharma氏、Xiaojiang Cui氏ら、および、Sunstate Biosciences社の科学者らは、ドキソルビシンをタンパク質の殻で包み込む方法を考案した。

SPEDOX-6と呼ばれる新製剤は、がん細胞のような分裂の早い細胞に薬剤が取り込まれる可能性を高めると同時に、心臓細胞への毒性を軽減した。ヒトがん細胞とヒト幹細胞由来の心臓細胞を用いた研究室での実験で、SPEDOX-6はドキソルビシンと同様にがん細胞には強い毒性を示すが、正常なヒト心臓細胞には従来のドキソルビシンよりもはるかに低い毒性を示すことが確認された。

同じ効果が、遺伝子変異によりドキソルビシン誘発性心臓損傷リスクが増加した患者から作製した心臓細胞でも観察された。本データは、SPEDOX-6が抗がん活性を維持しながら心臓細胞に対する毒性が低いことを裏づけている。現在、がん患者を対象にSPEDOX-6の安全性と有効性を検討する臨床試験が計画されている。

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