若年腎がんサバイバーは心疾患のリスクが高い
英語オリジナル版はこちらVCU Massey Cancer Centerの新研究によると、思春期および若年成人(AYA)の腎がんサバイバーの多くは、心疾患のリスクが著しく高い。
心血管疾患は、がんと診断されたAYAの合併症および死亡の主な原因である。AYAは、15歳から39歳までの患者を指す。
Journal of the National Comprehensive Cancer Network誌に掲載された研究では、腎がんと診断され、治療の一環として血管の成長を阻害する薬剤投与を受けたAYA患者の高血圧と心不全の発生率とリスクが評価された。
とくに、研究者らはスニチニブとソラフェニブという2つの薬剤の効果を調べた。
その結果、ソラフェニブ治療を受けた患者の約半数、スニチニブ治療を受けた患者の3分の1が最終的に高血圧を発症した。
「スニチニブまたはソラフェニブによる治療中に高血圧になったAYAが多数いたことは、高齢、肥満、男性などの特定可能な既存のリスク因子がない人でも、これらの薬剤による高血圧の重大なリスクがあることを示唆している」と、本研究の筆頭著者であり、Massey and VCU Health Pauley Heart CenterのCancer Prevention and Control研究プログラムのメンバーである腫瘍循環器医のWendy Bottinor氏(MD)は述べた。
当初の仮説に反して、研究者らは、AYA世代のがんサバイバーでは、高齢がん患者と比較して、若年であることは心不全リスクの低下とは関連しないことを発見した。
実際、このような人々は左室収縮機能障害と呼ばれる心不全のリスクがある。
American Cancer Societyによると、米国では毎年約9万人のAYAががんと診断されている。
腎がん、甲状腺がん、大腸がんは、この年齢層でよくみられるがんであり、この傾向はここ数十年増加傾向にある。
過去10年間に行われた複数の研究により示されているように、がんに罹患しているAYA世代における心臓病のリスクは、がんに罹患していない同年齢層の2倍以上であり、心臓病を患っているAYA世代における死亡リスクは、心臓病を患っていないAYA世代と比較すると10倍近く高い。
高血圧は心臓や血管に過重労働を強い、最終的には動脈の組織を損傷し、不整脈、心臓発作、脳卒中の確率を高める。
体内の化学信号は、新しい血管の生成である血管新生と呼ばれるプロセスを制御する。
これらの化学信号のひとつである血管内皮増殖因子(VEGF)は、他の細胞の表面に付着し、新しい血管の成長と生存に影響を与える。
血管新生は固形がんの進行に重要な役割を果たしている。がん細胞が増殖し、広がるためには、血液からの酸素と栄養が必要だからである。
血管新生阻害薬と呼ばれる種類の薬剤は、腫瘍の成長を支える血管の成長を阻害するために、単独で、あるいは他の治療法と組み合わせて使用されることが多い。
本研究では、治療レジメンの一部として特定の種類の血管新生阻害薬(VEGF阻害薬)を投与された早期腎がん患者を調べた。
スニチニブとソラフェニブはVEGF阻害薬である。
「VEGF阻害薬は、成人および小児がん患者に対する効果的な治療オプションとしてしばしば使用されるが、心血管毒性はこの治療の重大な制限となる可能性があり、最も一般的なものとして高血圧と左室機能障害が挙げられる」と、Bottinor氏は述べた。
歴史的に、AYAにおけるこれらの薬剤の心血管系毒性に関する科学的理解は非常に限られていた。
「AYAは、心血管系への負担を対象とするがん研究において、過小評価されているグループである」と、Bottinor氏は述べた。
「がんの診断、治療と心臓病の関係を理解することは、AYA世代のがんサバイバーの生涯を通じて心血管の健康を促進するために不可欠である。」