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ASCO 2023:縦隔原発B細胞リンパ腫に対する化学免疫療法後の放射線療法は必要ない可能性

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縦隔原発B細胞リンパ腫に関する最大規模の前向き研究の結果、化学免疫療法後に代謝学的完全奏効(CMR)が得られた患者には放射線療法を省略できることが示された。

IELSG37国際共同研究により、これらの患者は治癒の可能性を損なうことなく、晩期毒性を免れる可能性があることがわかった。

本研究は、ASCO 2023年次総会で発表された。

本試験では、放射線治療を受けたかどうかにかかわらず、完全寛解の患者では無作為化から30ヵ月後の全生存率が99%であった。また、放射線治療による再発リスク低減の追加効果はわずかであり、両群で非常によく似た無増悪生存率が観察された。

導入化学免疫療法が終了し、患者530例における効果を評価した。268例(50.6%)でCMRが得られ、観察群(132例)または放射線群(136例)に無作為に割り付けられた。

追跡期間中央値は63ヵ月(四分位範囲:48~69)であった。30ヵ月時点の無増悪生存率は、放射線群98.5%、観察群96.2%であった。

標準的な化学免疫療法の主な副作用は、脱毛、疲労、口や喉の痛み、一過性の白血球数減少(その後の感染症リスクあり)、血小板数減少(あざや出血リスクあり)、赤血球数減少(貧血)であった。

放射線治療は、虚血性心疾患、高血圧、弁膜症、心臓組織の瘢痕化または炎症などの心臓の問題をひき起こす可能性がある。照射野に肺を含む場合、瘢痕組織(線維化)や炎症(肺炎)、拘束性肺疾患や閉塞性肺疾患をひき起こす可能性がある。

「初回治療で寛解率を最大化する必要性から、リツキシマブ投与前の化学療法単独での成績が悪く、ほぼ全例が放射線照射を受けた試験で示された優れた結果に基づき、放射線による強化療法が歴史的な標準治療となった」と、スイス・ベリンゾーナのLymphoma Unit at the Oncology Institute of Southern Switzerlandのコンサルタント兼ユニット長のEmanuele Zucca氏(MD)は述べた。

「しかし、縦隔腫瘍に対する放射線治療の長期毒性はよく知られており、とくに若年成人が多い患者群では、乳がん、甲状腺がん、肺がんの2次がん、冠動脈疾患や心臓弁膜症のリスク増加が指摘されている。

本研究は、化学免疫療法が縦隔原発B細胞リンパ腫に対して有効な治療法であることを示しており、治癒の可能性に影響を与えることなく放射線治療を省略することを強く支持している。」

「今回の知見は、若年層に多く発症するこのタイプのアグレッシブリンパ腫にとって特に重要である。これらのデータより、初回の用量強化化学免疫療法に迅速に奏効した縦隔原発B細胞リンパ腫患者は、治療の一環として強化放射線療法を受けるかどうかにかかわらず、がんの再発の可能性が極めて低く、優れたアウトカムが得られることが示された。つまり、これらの患者は生存率を低下させることなく、放射線とその副作用を安全に回避できる」と、ASCO ExpertのCorey W. Speers氏(MD, PhD)は述べている。

最近の研究では、DA-EPOCH-R(用量調節エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、リツキシマブ)のような積極的化学免疫療法レジメンは、放射線療法を併用せずに優れた結果が得られることがわかっている。

さらに、免疫チェックポイント阻害薬やCAR-T細胞療法などの新規免疫療法は、治療後に再発するリンパ腫の患者に有望視されている。

現在、研究者らは、初回免疫化学療法で完全奏効が得られなかった患者において、PET検査とともにctDNA(リキッドバイオプシー)を用いることで、適切な治療方針の決定に役立つかどうかを検証する新しい試験の実施可能性を検討している。

本試験は、Swiss Cancer LeagueとCancer Research UKから資金提供を受け、スイスではSwiss National Science Foundationが一部支援した。

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