ICI心筋炎の死亡率は改善するも依然として高値ICI心筋炎の死亡率は改善するも依然として高値

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)に関連する免疫関連有害事象(irAE)の中で最も注意すべきなのが心臓irAEだ。日本臨床腫瘍学会学術集会(3月26~28日、会長:田村研治・島根大学医学部附属病院腫瘍内科/先端がん治療センター教授)の合同シンポジウム『腫瘍循環器診療で困ったらどうする -Beyond Onco-Cardiology Guideline-』では国立がん研究センター東病院循環器科長の田尻和子氏が、ICI関連心筋炎の最新状況を報告した。この中で、「irAE全体の死亡率、ICI心筋炎の死亡率はともに改善しているが、引き続き注意が必要である」と述べ、そのために臨床現場で必要な注意点を報告した。

ICI同士の併用でリスクが3倍に

最新のレビュー(Herrmann J, et al.: JAMA Oncol. 12(1): 90-99, 2026)では、irAE全体の死亡率は2016年の14%から、2021年は7.3%へと低下した。またICI心筋炎の死亡率も45.5%だったものが23%といずれも改善はしたものの、ICI心筋炎が最も死亡率の高いirAEであることは変わっていない。特に注意すべきは、ICI同士の併用療法(例:イピリムマブ+ニボルマブ)では、ICI心筋炎の発症率は1.0~2.5%と、単剤使用の場合の0.75~1.0%と比べて2倍から3倍に跳ね上がることから、より一層の注意を要すると警鐘を鳴らした。

「ICIの使用によって、多様な心血管障害が出現するが、その機序ははっきりと解明されたわけではない」と田尻医師は述べた。これまでに集積された知見から、免疫が活性化された結果、末梢に少数存在している心筋反応性T細胞が活性化される、抗アセチルコリン受容体などの自己抗体が反応する、心筋に浸潤したCD8陽性T細胞がインターフェロンγを分泌して、同じく心筋に浸潤してきた骨髄由来単球を傷害性のあるマクロファージへと分化させるなどの機序が考えられるという。

irAE心筋炎のリスク因子として、同氏は前述の①ICI同士の併用に加え、②心毒性を有する抗がん剤(アントラサイクリン系抗がん剤、血管内皮細胞増殖因子阻害剤など)との併用、③患者因子として心疾患(心筋梗塞、心不全、その他のがん治療関連心筋障害)の既往、④自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、関節リウマチ)、⑤胸腺腫を挙げた。

心電図と心筋トロポニン検査を駆使

早期発見、早期介入がICI心筋炎診断・治療の基本となるため、心電図検査と心筋傷害バイオマーカーである心筋トロポニン検査の重要性を強調した。心電図はICI心筋炎に特有の所見はないが、簡便であり、感度の高さが魅力である一方、異常所見が時間の経過とともに明瞭になる現象も知られており、当初は軽微な異常しか認められない場合でも、繰り返し検査することが大切であると指摘した。

次に田尻氏は、ICI心筋炎を疑った際の診療の流れについて最新の知見を前述のHerrmann氏の論文から引用する形で報告した。治療はICIの休薬とステロイドパルス療法が標準治療。ICI心筋炎の基準を満たさず、CTCAEもgrade 1と軽微な場合は、ICI投与を継続し、所見悪化があればステロイドを投与する。ICI基準を満たしても無症状・無症候でCTCAE grade 2の場合は多職種で協議し、ステロイド投与の是非やICI治療継続の是非を協議する。症状はあるものの非重症の場合(CTCAE grade 3)、あるいは重症で劇症型心筋炎の可能性がある場合(CTCAE grade 4/5)では、入院し早期にステロイド投与を開始する。劇症型への移行が懸念されるケースでは、ICUへの入室を考慮する。「ステロイド不応例や劇症型では免疫抑制剤の併用も検討されるべき」との考えを示した。

また田尻氏は、国立がん研究センター東病院では免疫抑制剤であるアバタセプトを使用する臨床研究を進めていることにも言及した。T細胞が抗原提示細胞(APC)と相互作用する際に、APCが提示する抗原をT細胞受容体が認識する第1シグナルに続き、APC表面上のCD80/CD86分子とT細胞表面のCD28分子が結合する第2シグナルの2段階で反応が進むが、アバタセプトはこの第2シグナルを阻害することでT細胞の活性化を抑制する。田尻氏は「アバタセプトの効果は最終的に判定できないものの海外では治験が行われており、その結果にも注目している」と述べた。

循環器内科医でも心筋炎は不慣れだが

最後に田尻医師は、ICI心筋炎診療には多職種一丸となって取り組む姿勢が大切であり、ICIを使用する施設では、心筋炎を疑った場合に、腫瘍医が循環器医にただちに相談できる体制を構築しておくべきだと指摘した。

「循環器内科医にとっても心筋炎は珍しい病気であり、診断・治療に慣れていない。またステロイドや免疫抑制剤の使用にも不慣れである。一方で心筋炎は急変することも多く、突然やってくるケースも多い。腫瘍医と循環器内科医とが協力した事前のirAE対策が必要であり、心筋炎が疑われた場合はただちに腫瘍医と循環器内科医が相談する体制を構築していることが大切」と強調した。