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小児がんの長期サバイバーは心臓疾患による死亡リスクが高い:危険因子を治療する閾値はより低くあるべき

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VCU Massey Comprehensive Cancer CenterとVCU Health Pauley Heart Centerから発表された新研究によると、小児がんサバイバーは、主要心血管系イベント(心不全、心臓発作、脳卒中を含む)後の死亡リスクが一般人口よりも有意に高いことが示された。

今週Journal of the American College of Cardiology誌に発表された本研究結果によって、心臓の健康に関する臨床ガイドラインにおいて、小児がんサバイバーの心血管危険因子には早期から対処すべき、というパラダイムシフトが起こる可能性がある。

本研究の筆頭著者であり、MasseyとPauley Heart Centerの腫瘍循環器専門医であるWendy Bottinor氏(MD)は、「一般人口における50歳時の主要心血管系イベント後の死亡リスクは、小児期にがん治療を受けたサバイバーの30歳時の死亡リスクと同等であることがわかった」と述べた。

「未治療の危険因子は、一般人口に比べて、小児がんサバイバーにおける重篤な心臓イベント後の死亡リスクにより大きな影響を及ぼすことから、若いということだけで、高血圧や高コレステロールのような危険因子の治療は必要ないと決めつけるべきではない。」

これまでの研究で、小児がんサバイバーは一般人口に比べて心臓病のリスクが高く、心血管系死亡率が高いことが証明されている。

本研究は、がんに罹患したことはないが、同じ心臓疾患を経験した人と比較して、小児がんサバイバーの後年における主要心血管イベント後の死亡リスクに及ぼす小児がんの影響についての理解を深めるものである。

Bottinor氏らは、小児がんサバイバーとその兄弟姉妹約25,000名からなる大規模コホートであるChildhood Cancer Survivor Studyを含む、いくつかの強固なデータベースにその回答を求めた。CARDIA研究は、心臓病がどのように発症するかについての洞察を得るために作成された、多様な人種の若年成人を対象とした心臓病のデータベースである。

研究者らは、心不全、心臓発作、または脳卒中後の死亡率が、がんに罹患していない兄弟姉妹よりも小児がんサバイバーのほうが高いことを発見した。

驚くべきことに、小児がんサバイバーがこれら3つのイベントのいずれかを経験した時期は、一般集団と比べて10年以上若い時期であった。

「本研究は、小児がんサバイバーは老化が促進されているようにみえ、全体的な医学的プロフィールが10歳以上高齢の人々と類似しているという概念を裏づける」と、MasseyのCancer Prevention and Control研究プログラムのメンバーでもあるBottinor氏は述べた。

研究者らは、潜在的な解決策の特定のために、脂質異常症として知られる病状(血液中のコレステロールや脂肪のバランスが崩れ、動脈の詰まりや深刻な心臓病の原因となる)が、心血管系イベント後の死亡率の低下と相関していることを突き止めた。

脂質異常症と診断されると一般的にスタチンを処方される。スタチンは、コレステロール値を下げ、心臓病やがんの危険因子として知られる慢性炎症を抑えることによって、心臓合併症のリスクを軽減する。

これまでのエビデンスは、スタチンはがん治療を受けている患者の心臓を保護する薬剤である可能性を示唆している。

このことから、Bottinor氏と共同研究者らは、心疾患を有する集団にのみスタチンを使用するのではなく、小児がんサバイバーに対してスタチンをより広く使用することで、後年、心血管系合併症による死亡を予防できる可能性を示唆した。

さらに、本論文によると、小児がんサバイバーでは、高血圧(血圧上昇)も心臓関連死のリスク上昇と関連していた。

以前に発表されたデータでは、がん治療を受けた人が高血圧である場合、高血圧だが、がん治療を受けたことがない人に比べて、心臓病のリスクが増大することが示されている。

Bottinor氏は、複数の医師会が発表している現在のガイドラインには、特に若年患者について、降圧薬を投与する対象者に関する高い基準値が含まれていることが多く、長期的な心臓合併症のリスクを減らすためには、これらのパラメーターを調整する必要があると述べた。

「小児がんサバイバーについては、高血圧治療のハードルを下げるべきだろう。なぜなら心臓病リスクが一般人口よりはるかに高いからである」と、Bottinor氏は述べる。

今後を見据えて、Bottinor氏は以下のように述べた。がん治療を受けた若年成人における心臓の健康リスク因子の負担をよりよく理解するために、さらなる研究を行う必要がある。リスク因子の修正が患者の転帰に影響を与えるかどうかを調査する臨床試験を始動させる必要がある。そして、小児や若年成人のがん治療後に生じる危険因子に対する一般的な認識を高めるための努力が必要である。

腫瘍循環器学という新たな分野は、心血管系の健康への悪影響を軽減するため、がん治療前、治療中、治療後の専門的かつ集学的な心臓ケアへの道を開いている。

MasseyとPauley Heart Centerの腫瘍循環器学プログラムは、International Cardio-Oncology Society(国際腫瘍循環器学会)からCenter of Excellenceとして認定されたバージニア州唯一のプログラムである。

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