免疫チェックポイント阻害薬は短期的には血圧を上昇させず 横浜市大医師らがRCTのメタ解析などから証明
免疫チェックポイント阻害薬は短期的には血圧を上昇させず 横浜市大医師らがRCTのメタ解析などから証明

横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学の峯岸慎太郎助教、金口翔助教が免疫チェックポイント阻害薬にかかわるランダム化比較試験(RCT)32件、被験者総数19,810例のがん患者を対象としたシステマティック・レビューとメタ解析を行い、「免疫チェックポイント阻害薬を介しても短期的には血圧が上昇しない」ことを証明した。この結果は2022年9月12日にHypertension誌オンライン版に掲載された。

検討の対象とした32件のRCTの観察期間中央値は36ヵ月、患者の全生存期間中央値は15ヵ月であった。免疫チェックポイント阻害薬開始と高血圧との間に有意な関連は認められなかった(オッズ比:1.12、95%信頼区間:0.96-1.30)。抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体など各グループの違いによる差もみられなかった。

また免疫チェックポイント阻害薬は単剤ではなく、ほかの作用機序が異なった薬剤と併用されることが多い。抗血管内皮増殖因子製剤を含むさまざまな薬剤との併用療法の高血圧リスクにも有意差は認めなかった。

峯岸助教は、滋賀医科大学NCD疫学研究センター最先端疫学部門の矢野裕一朗教授、香川大学医学部薬理学の西山成教授らとともに、日本高血圧学会フューチャープラン委員会・ワーキンググループを組織、“がん高血圧”(Onco-Hypertension)という新しい診療・学術領域を世界に先駆けて提唱している。「高血圧とがんの関連、血圧を上昇させるがん関連因子、薬剤とがんリスクで複雑なメカニズムに対処していくためには多職種による学際的な協力が重要。本研究グループはOnco-Hypertensionという新しいコンセプトに基づき、多方面からのエビデンスの構築を行い、がん患者の管理を最適化し、予後を改善することを目標としている」とコメントしている。