News from ecancer News from ecancer

大気汚染はがん患者の心血管リスクを高めるとの研究結果

英語オリジナル版はこちら

現代の治療法によって多くのがん患者の寿命は延びたが、サバイバーはしばしば心血管疾患を含む慢性的な健康障害を抱えて生きている。

JACC: CardioOncology誌に掲載された新研究によると、大気汚染はがん患者の心血管疾患と死亡率の増加に重要な役割を果たしており、これらの疾患に関する健康格差の一因となっている。

「本総説は、腫瘍循環器学のリスク評価と患者管理において、環境要因、とくに大気汚染を考慮することの重要性を強調している」と、本研究のシニアオーサーであり、中国・武漢Tongji Medical CollegeのTongji Hospital循環器内科医であるXiaoquan Rao氏(MD、PhD)は述べた。

「がん患者の心血管系の健康における大気汚染の重要な役割を明らかにすることで、われわれの研究が、この分野のさらなる研究を促進し、臨床診療や公衆衛生政策に情報を提供することを目的としている」と、Rao氏は述べた。

Rao氏は、大気汚染は心血管疾患とがん両方における重大な危険因子として認識されていると指摘した。しかし、特に腫瘍循環器学や両疾患の重複におけるその影響について研究されたものはほとんどない。本新研究は、そのギャップを埋める必要性から始まったとRao氏は述べた。

研究者らは、2000~2023年の間に発表された論文を検証し、大気汚染が心血管疾患とがんに及ぼす複合的な影響を直接調査した8件の研究を発見した。

PM2.5、すなわち大気中の微粒子への曝露は、がん患者における心血管疾患の罹患率および死亡率の上昇と有意に関連しており、その逆もまた同様であることがわかった。Rao氏は、大気汚染への曝露は、炎症経路や酸化ストレス経路など、がんと心血管疾患に共通する複数の危険因子に影響を与えるようだと指摘した。

研究者らによれば、驚くべき発見は、高い汚染レベルに短期間さらされただけでも、がん患者の心血管の健康に急速に影響が及ぶということであった。

「このことは、一時的な大気の質の悪化でさえ、腫瘍循環器疾患患者のような脆弱な集団に直ちに悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している」と、Rao氏は述べた。

本論文はまた、大気汚染がいかに世界的な健康格差の一因となっているかを明らかにしている。恵まれない人々はより高いレベルの大気汚染にさらされており、社会経済的地位の低いがん患者は、一般の人々よりも大気汚染に関連した心血管疾患の死亡リスクが高いと、研究者らは述べている。

「大気汚染が心血管疾患やがんに及ぼす影響をより詳細に理解するには、臨床研究を含むさらなる研究が必要である」と、Rao氏は述べた。

Rao氏は、この研究結果は、大気汚染のリスクをよりよく理解し、腫瘍循環器学においてより脆弱な集団を特定するために利用できると付け加えた。

「この認識は、がん患者の心血管疾患リスクを軽減することを目的とした、患者に合わせた大気汚染曝露対策や個別の患者管理戦略を開発する上で極めて重要である」と、Rao氏は述べた。

今後の研究では、さまざまな種類のがんや心血管疾患における大気汚染関連の健康格差の調査に焦点が当てられる予定である。研究者らはまた、腫瘍循環器疾患患者に対する大気汚染の影響を軽減するための環境介入の有効性を評価したいと考えている。

本論文「Air Pollution in Cardio-oncology and Unraveling the Environmental Nexus」は、JACC: CardioOncology誌が「健康・健康格差に対する社会的・環境的決定要因」を取り上げた特集号の一部である。

  • 当コンテンツは、英国の慈善団体である ecancer Global Foundation(以下「ecancer」)が所有するコンテンツを、株式会社エムエヌシーシステムズ(以下「MNCS」)が日本における独占許諾を得て選択し、参考翻訳したものです。
  • 当コンテンツの英語オリジナル版の著作権はecancerに帰属します。当コンテンツの著作権、その他の一切の権利、ecancerが所有するコンテンツの参考翻訳の著作権についてはMNCSに帰属します。
  • 当コンテンツを複製、掲示等いかなる目的でも利用することは明示的に禁止されています。
  • 当コンテンツの参考翻訳に伴い、誤り、脱落、または誤訳等が生じても、ecancerならびにMNCSはその正確性に関して一切の責任を負いません。