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前立腺がん治療薬の心血管への安全性については未解決

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前立腺がんに対するさまざまな種類のアンドロゲン除去療法(ADT)の相対的な心血管への安全性は、PRONOUNCE試験が早期終了後も未解決のままである。この最新研究は、ESC Congress 2021の本日のHot Line sessionで発表される。

毎年、世界で100万人以上の男性が前立腺がんと診断されている。

これらの患者は、心血管疾患を発症するリスクが高く、健康な人と比べて心血管疾患による死亡の可能性は高くなる。

前立腺がん患者の約50%は、疾患のいずれかの時点でADTを受けることになる。ADTは心臓病および脳卒中と関連しており、とくに、既存の循環器系疾患のある男性において顕著である。

しかし、これがアンドロゲン遮断の方法、すなわち精巣摘出、テストステロンアンタゴニスト、あるいはゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体の調節によるものかどうかは不明である。

これまでの研究で、GnRHアンタゴニストは心血管への安全性プロファイルがより好ましいことが示唆されている。

PRONOUNCE試験は、前立腺がん患者におけるGnRHアンタゴニストとGnRHアゴニストの心血管への安全性を前向きに比較した最初の無作為化臨床試験である。

また、この試験は、泌尿器専門医、腫瘍専門医、循環器専門医が緊密に連携した初めての学際的多国籍腫瘍循環器学の成果に基づく試験であった。

本試験は、当初、前立腺がんと動脈硬化性心疾患を併発した男性900例の登録が計画された。参加者は、GnRHアンタゴニストのデガレリクスとGnRHアゴニストのリュープロレリンに1対1で無作為に割り付けられ、12ヵ月間投与を受けた。

主要評価項目は、死亡、心筋梗塞、脳卒中から成る主要心血管有害イベント(MACE)が12ヵ月間で初めて発生するまでの期間であった。

登録が予定より遅れたため、無作為化された患者545例において、予定されていた66のエンドポイントイベントの半数に満たず、試験は早期に中止された。

平均年齢73.2歳の男性545例が解析対象となった。12ヵ月の時点で、デガレリクス投与群とリュープロレリン投与群の間でMACE発生割合に統計学的な有意差は認められなかった。

主要評価項目のイベントは、デガレリクス群15例(5.5%)、リュープロレリン群11例(4.1%)で発生した(p=0.53)。

治験責任医師のRenato Lopes教授(Duke University Medical Center、ダーラム、米国)は、次のように述べている。「PRONOUNCE試験は、前立腺がん患者におけるGnRHアンタゴニストとGnRHアゴニストの心血管への安全性を前向きに比較した、初の国際無作為化臨床試験である。

本試験は、参加者数とイベント数が当初の計画より少なかったため、早期に終了したが、1年後のMACEについては、デガレリクス投与群とリュープロレリン投与群の間で差は認められなかった。このように、GnRHアンタゴニストとアゴニストの相対的な心血管への安全性は未解決のままである。

がんのサバイバーシップが高まり、がん以外の競合死が起こりやすくなる中、がん治療の心血管への影響を理解する必要性は常にある。」

Renato Lopes氏は、「PRONOUNCE試験は、がん治療が心血管の転帰に与える影響を評価するという共通の目的をもった、腫瘍専門医と循環器専門医の学際的協力モデルを提供するものである」と結論づけている。

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